人は何のために生きるのか。

2013/08/15(Thu) 18:46
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「三姉妹」
中国雲南省内、高度3200mの村に住む人々の記録。いや、ありていに言えば貧困の記録だ。
粗末な家で暮らす三姉妹、無口な10才の長女、やんちゃな6才の次女、人懐こい4才の三女。両親の姿は無く、長女が二人の世話をみているようだ。父の存在は会話の端々から感じられるが、母親の気配は無い。
生計をどうやってたてているのか、父の仕送りと祖父の羊の放牧でなんとか、だろうか。
日々の食事はどうしているのか、学校は行っているのかいないのか。そもそも学校はあるのか。
ある日父が帰ってくる。しかしそれはひとときのことで、次女三女を連れてまた出稼ぎに出ると言う。お前は残ってここでおじいさんと暮らしなさい、おじいさんを手伝うんだよ、と父は命じる。長女はいいともいやとも言わない、言っても仕方ない、もう決まったことだから。
祖父との二人暮らしは労働の日々だ。祖父にとって、頑丈で従順な孫娘は単なる労働力でしかない。
食べて行くためには働かなくてはならないのだ、働け働け!
勉強などしおって羊に逃げられたらどうする?!
長女は黙々と働く、文句一つ言わず、何かにあたることもなく。
長女はいつもフラットな表情をしている。無表情なのではなく、無意識のうちに感情の表出が抑えられてしまっている『一歩手前で止まった顔』。学校の始業前、門の外で駄菓子を売る女に群がる子供たちを最後まで眺める彼女、彼女には駄菓子を買うお金すら無いからただ見ているしか無い。でもその顔は羨ましいとか悔しいという顔ではないのだ、なんだろう、ただただ目を離すことができなくて、じぃっと凝視している、なすすべもない顔。私はとても哀しい。
150分強の作品の中で一度だけの笑顔は友だちに向けてのものだった。糞拾いをする友だちに「遊びにいっていい?」と言ってみる彼女。彼女は遊びに行けたのだろうか。
そして父と妹たちが帰ってくる。子守役の女性とその娘もいっしょで、家族は6人になった。家族の会話は戻ったが、家計の大変さは変わらない。
仲睦まじい三姉妹、かいがいしく働く子供達の姿、時折はさみこまれるユーモラスな光景、それらに反応して観客は笑う。でも私は全く笑えない、なぜ笑えるのだ。この壮絶な貧困の記録を見せられて笑えるわけがない。
貧困な村とはいっても、携帯電話や携帯ゲーム機を持つ村人もいる。党の農村改革政策も断行されようとしている。数年後には様変わりしているのかもしれない、でももしかしたら村全体が崩壊しているのかもしれない。人も村も限界ぎりぎりの世界なのだ。
生きていくためには働かねばならないと大人たちに言われて子供達は働く。弟妹の世話をみるのはあんただよと言われて長男長女は親代わりとなる。しかし子供時代を奪われ、ああも苦役を強いられ、それでも生きねばならないその価値とは何なのだろう。生きているだけでも十分だなんて私には言えない。
つらかった。本当につらい映画だった。

Comments(2)

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2013/08/21 21:53 [ 編集]
さとうさんた MAILURL

こんにちは。
atsumiさんのご感想を拝読しているだけで、胃がきゅうと痛くなるような辛さがあります。映像でご覧になると尚更インパクトが強いでしょうね。これ、設定が現代なんですよね?少子化で、子供が一層大切にされている日本とはかけ離れた世界ですね..

2013/08/24 06:36 [ 編集]
atsumi MAILURL

さんたんさん、こんにちは。
2010年から2011年にかけて撮影されたドキュメンタリーです。監督は壮絶な格差を批判・非難する、農村部の窮状を世の中に知らせる、というような態度とは無縁で、ただ淡々と対象を追っていきます。しんどい作品なのですが、観る側に『安易な同情、安易な類型化』を許さない優れたドキュメンタリーだと思います。ドキュメンタリーといいつつ、勝手に物語を作るパターンもありますからね。

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