少年と自転車

2012/05/04(Fri) 15:25
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シリルはホームに預けられている少年。
「一ヶ月で迎えにいくから」という父の言葉を信じて待っていたが、父が現れるわけもなく。
不通となった自宅の電話番号に何度もかけるシリル。押し間違えたに違いない、番号が変わったことを知らせてくれないわけがない。引っ越したという管理人の言葉も信じない。僕の自転車があるはずだ、取り返さなくちゃ。
ホームを抜け出して団地へたどり着き、すったもんだの末部屋に入る。皆の言うことが正しかった、無人の部屋には紙きれ一枚落ちていない。
サマンサは美容院を経営している。偶然出会ったシリルのことがなぜか気にかかり、彼の自転車を取り戻してやる。さらに週末限定とはいえ里親になることも了承する。
そして、『父親にどうしても会いたい』というシリルの願いもかなえてやる。予想されていたことだが、父親は息子を拒絶。二度と会いにくるな、電話もかけてくるな、俺には子供は無理だ。
帰りの車の中で、シリルは自分で自分を痛めつける。僕が悪いから父は僕を愛してくれないんだ、僕のせいだ僕のせいだ。サマンサは彼を抱きしめることしか出来ない。

サマンサとシリルの生活は順調には進まない。
俺とこいつのどちらを取るのか、と彼氏に迫られたサマンサがシリルを選んでも、彼はまだ彼女を信じきれない。
父という存在を求めてしまう彼は下心みえみえの町の不良に惹かれ、強盗まで働いてしまう。相手を喜ばせたい一心のシリル、痛々しくて見ているのがつらい。
金は盗れたが強盗は失敗。不良に捨てられ、盗んだ金を父に贈ろうとして拒絶され、シリルはやっとサマンサの愛に気付く。

ずっと暗い顔だったシリルが、はじけるような笑顔でサマンサと自転車を走らせる。こわばっていた身体ものびのびとしている。
サマンサを手伝い商店主に礼儀正しく挨拶する彼を見ていると、ああこのまま良い方向に進み始めるのかもと一瞬思う。が、ダルデンヌ兄弟の映画は気休めや見せかけのハッピーエンドを用意しないから、やはり不安。
そして不安・不穏なまま映画の幕は下りる。
次の週末も少年がサマンサと再び自転車を走らせ、笑い合っているといいのだが。

子供は強くて弱い。大人に振り回される。
息子を拒絶した父親は確かに卑怯だが、本当に無理だったのだ。自分には責任が取れない、愛してはいるが求められるだけのものを返してやれる自信が無い、多分無理だ。だったら手を離したほうがましではないか。そう考えたとしても、私には彼を責められない。

私にとってダルデンヌ兄弟のベストは「イゴールの約束」と「息子のまなざし」で、今回の新作がそれらを上回ることはなかった。とはいえ、見てよかったと思う。

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