作品以前の問題。

2011/05/02(Mon) 10:14
movies

基本的に映画は映画、私は私なのだけれど、それがうまくいかないことがたまにある。最近見た2本の映画「トスカーナの贋作」と「ブルー・バレンタイン」がそれだ。
前者は作家の男とギャラリー経営を生業とする女、後者はアーティスティックな才能(に似た輝き)のあるブルーカラーの男と不仲な両親のもと医者を目指す女を中心に据え、それぞれの結婚後のねじれて冷えきった関係がかなり厳しく描かれる。正直私はどちらの映画も持て余し気味、げんなりし、あーあなんだかな、な帰り道になってしまった。

トスカーナのげんなりの原因は女。彼女は夫をなじる。ほとんど家にいてくれない、面倒なことはみんな私、ちょっとはねぎらってくれてもいいじゃない、私の気持ちなんて全然わかってくれない、イヤリングを替えてルージュをひきなおしたこと気付いてくれた?、私はあなたの何なのよ、愛はもう無いの?エンドレスである。ジュリエット・ビノシュは透明な美と暖かみと媚態と天然ボケ等がいくつになっても変わらず同居していて、面白い女優ではある。(「レッドバルーン」や「隠された記憶」の彼女は見直した。)今回の役どころにはぴったりで、もうくどいくらいに活き活きと演じている。北を向いて話していたと思ったら突然南、論理のつながりが無く、次から次へと銃弾のように言葉が飛び出してくる。私の話を聞いてよと言われても、話題がこうもぽんぽん飛んでしまっては付いていきようがない。私は夫(イギリスのバリトン歌手ウィリアム・シメルが魅力的)に終始同情してしまった。
終着点が全くわからないジェットコースターのようなスリリングな展開、時間と空間の移動の妙、コミカルな味付け、何気なく出てくるジャン・クロード・カリエール、キアロスタミ監督の手腕はさすがだと思う。しかしそれ以前に私はあの女がダメだ、もうやめてくれ、黙ってくれと神に祈っていたのは夫だけではない。

「ブルー・バレンタイン」は男女双方というより、『恋は所詮ひとときの気の迷い』という私のスタンスの問題だと思う。
心の通わない両親(父親役がジョン・ドーマン、ぴったりだ)の不幸な関係を見て育った女(ミシェル・ウィリアムズ)は暖かい家庭に憧れ、引越業のロマンチックな男(ライアン・ゴズリング)と出会い、恋に落ちる。男も崩壊家庭に育ったから、同じ寂しさを女の中に見たのかもしれない。最初は幸せだった、娘フランキーは愛らしく素直に育っている。パパもママも大好きだ。しかし男は変わらない。音楽や美術のセンスはあるが、それを活かして何かを始めようとする気配は皆無。朝から酒を飲み、ペンキ塗り仕事を気ままに続けるだけだ。成績優秀だった女は妊娠と共に目標をダウングレードしたのだろう、今は看護師として家計を支える日々。勤務先には魅力的な医者(ベン・シェンクマン、変わらないなあ)がいて何かと目をかけてくれている、ありがたいがその分悲しくもなる。
飼い犬のメーガンが車にはねられて死んだ日、彼女の中の何かが切れた。もう耐えられない、こんな生活にもあんな夫にも。
夫はまだ妻を愛しているから彼女を励まそうとモーテルを予約、飲んで酔っぱらって愛し合おうと提案。そうすれば何かが変わると期待したかもしれないが、何も変わらない。彼女の絶望が深くなるだけだった。
夫は言う「君とフランキーを守るために闘ってきた」「君のために変わる、チャンスをくれ」変われないよ、と私は独り言。彼女の勤務先に押し掛け大暴れする彼、彼女の実家で君を愛してるんだと懇願する彼を見ていると、まるでDV夫だなとしか思えない。これはドメスティックバイオレンスの映画か?と途中から思ったくらい終盤の彼の姿にはうんざりした。
一目惚れはあるだろう、でもそれは続かない。長いあるいは短い夢から覚めた時に眼前に広がる世界、自分の選択した結果に後悔しないよう、人は覚悟すべきである。などと思っている私がこの映画を暖かく見られるはずが無い。(それなのになぜ見に行ったかというと、NPRの映画座談会みたいな番組で絶賛されていたからである。)
映画の撮り方や構成、キャスティングは意欲的だけれど、いかんせん恋はなあ恋は。
愛だの恋だのをうたった映画は慎重に選択すべきだと反省した次第である。


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