どうにもならなくてもやらねばならないことがある。

2011/02/03(Thu) 16:42
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「君を想って海をゆく」Welcome
イラクからフランスまで三ヶ月かかってやっとたどり着いた。目的地はイギリス。ロンドンに移住した恋人に会いたい、マンUの選手になりたい。クルド人のビラルは仲介人に500ユーロ払って貨物トラックの荷台に同胞たちと忍び込む。が、あと一歩のところで失敗。港の難民摘発検査は徹底していて、二酸化炭素の濃度測定まで行われていた。逃れるために難民たちはビニール袋をかぶるのだが、ビラルはそれに耐えられない。トルコ兵に捕まり、ビニール袋をかぶらされ放置された時の恐怖と苦痛が体から離れないからだ。
略式裁判の結果、強制送還はされないがイギリス渡航は認められず、彼は難民収容所に留め置かれる。トラックが無理でも泳いでなら渡れるかもしれない、とビラルはイギリス行きをどうしても諦められない。
町のスイミングスクールで老若男女を教えるシモン。妻とは別居中、仕事もぱっとせず気持ちがふさぎがちの彼の前にビラルが現れる。クロールを教えてほしい、と彼。別段断る筋合いも無いので、じゃあ明日のこの時間に、と軽い気持ちでシモンは引き受ける。もちろん彼の気持ちのどこかには、難民支援の仕事を続ける妻のことがあった。俺だって差別主義者じゃあないんだ-でもそれまでの彼にとっての『難民』は自分とは無関係で、顔の見えない存在だったろう。
ビラルは必死に練習する。元々運動神経に優れていた彼は上達が早かった。なぜ泳ぎを?とシモンが尋ねると、ビラルははにかみながら恋人ミナの写真を見せる。かわいい子じゃないかと目を細めるシモン。妻への思いを断ち切れず、ビラルを助けることでもしかしたら妻が考え直してくれるかも、と最初は考えたかもしれないが、素直でひたむきなビラルと関わるうちに、彼への思いやりの気持ちがシモンの中に少しずつ芽生えていった。
しかし現実は厳しい。不法滞在者はもちろんのこと、彼らを援助する者までもが官憲のターゲットとなっている。ビラルを助けるシモンや、彼の元妻が参加する援助団体への警察の干渉は日に日に酷くなっていった。
そしてミナから電話が。彼女は父の意向により一度会っただけの従兄と結婚させられるという。なんとしてでも彼女のもとへ行かなくては!ビラルはシモンのウェットスーツを無断で借り、海へと向かう。
対岸が見えるところまでなんとか泳ぎ続けた彼だったが、イギリスの湾岸警備隊の船に見つかってしまう。あとほんの少しなのに、もう向こうが見えているのに、彼は必死で逃げるが、逃げ切れるはずがなかった‥。

どうしたってビラルはイギリスへ渡れない。
シモンが妻の愛を取り戻すことは出来ない。
ミナが親の決めた結婚から逃れることはできない。
英仏両国の難民受け入れ政策が緩い方に変わる見込みはない。
それでもビラルは行くと決めた道-行けば死ぬかもしれない道を辿り、シモンは無駄とわかっていても相手を想い続け、涙を流すのだ。
シモンはひとりロンドンへ渡り、ビラルがミナに渡すはずだった指輪を受け取ってもらおうとする。彼女が受け取らないだろうことは彼にもわかっていたはずだ。でも来ずにはいられなかった。それが自分のすべきことがだと思ったから。
ミナが席を立った後、店内のテレビではクリスチャン・ロナウドがリヨン相手にゴールを決めるシーンが流れ、客達が沸きたつ。マンUが大好きだったビラルは、まだほんの17才だった。

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