不慮の事故により急死した双子の兄トミーに代わって『アバター計画』に参加するジェイク。彼は海兵隊の任務中に脊椎を傷め下半身不随の身となっていた。その計画は惑星パンドラの総合調査の一環で、そこに住むナヴィ人に同化し彼らの生態システムから文化、生活まで全てを把握しようというもの。ナヴィと人類の遺伝子を融合させて作った『アバター』というボディに自身の意識を移動させ、ナヴィ然として彼らの中に入っていくのである。
計画のボスであるグレースはナヴィを尊重し、純粋な学問的探究心から調査を進めていたが、スポンサー会社の目的はパンドラの希少金属独占であり、警護担当の軍はパンドラ侵攻・ナヴィ殲滅の機会を狙っていた。
最初は元海兵隊員として大佐に情報を流していたジェイクだが、パンドラの自然の美しさ、多様で神秘的な生態系、深遠で純粋なナヴィ文化に引き込まれていく。そして、彼はナヴィの女性ネイティリに恋するように。
とかなんとか粗筋を説明する必要が無い超有名な映画を公開後1年以上たってやっと見た。大変堪能、感動、繰り返し見てしまう。
見なくても話はわかるとスルーしていた私は大バカ者だった。確かに話は単純で、過去何度も文章化、映像化されてきた定番物語である。ポカホンタス、ダンス・ウィズ・ウルブス、ラストサムライ、どれもパターンは同じだ。白人・先進国の男性が、先住民、後進国のリサーチ、懐柔、啓蒙(ゆくゆくは侵攻・征服)の先遣隊としてやってくる。実際に交流を始めると、相手には相手なりの独自の文化、豊かな人間性があり、目からウロコが落ちる。相手国女性に恋もする。そして本国から「はよせい、もたもた何しとんじゃ」と矢のような催促が入るようになり、主人公は双方の狭間で葛藤、逡巡。しばし熟考の後彼は本国・雇い主に反旗を翻し、愛する相手と彼女の世界を守るために拳をあげ剣をふるい銃を構えるのであった。
アバターはハッピーエンドになるところが過去の前例とは違うけれど概ね同じ。陳腐よね、と言ってしまうことは簡単だ。だが、だが、これはそう簡単に断じることができない。人間の本質をつき、尽きる事の無い憧憬の世界を描く映画なのである。
アバターは『上から目線』ではなく、並列の目線でナヴィを描いているのが優れていると思う。言語(ナヴィ語の体系が本格的に作られたという記事は過去に読んだ)や宗教、文化等ナヴィ世界がしっかりと構築され、物珍しい異国文化としてではなく、同等、いや同等以上の尊重すべきものとして描かれるからリアリティもある。
主人公の再生の過程がまた素晴らしい。戦争で失った足の感覚をアバターと化すことによって取り戻す。大地を踏みしめて土の感触を心から楽しむ彼の姿は-フルCGだろうが実写だろうが変わりなく-感動的だった。彼がアバターである時間は、彼自身の体にとっては『夢を見ている時間』なのだけれど、現実でもある。ナヴィの世界は架空ではなく、そこにいる間のジェイクもやはりリアルな存在なのだ。そのあたりの空間や時間の何とも言えない不思議な感じが面白い。
圧倒的な映像美。絵が綺麗だからと作品の評価を持ち上げるのは好きではないけれど、アバターの映像美はただ美しいだけではなく、畏敬の念を起こさせる驚嘆の美だと思う。
ウォーリーEの時にも感じた『人はここまでの世界を創造し描くことができるのか』という人間の想像力の素晴らしさ。CGの腕前が優れているだけではこういう絵は描けない。
ゴーギャン、田中一村の極彩色な世界。美しさと狂気が共存し、魔物が常に潜んでいそうな世界。ピラネージの描く牢獄的な、limboのような世界。もちろん宮崎駿的世界も。そういう既存のあれこれを思い出すのは、アバターの世界が『超絶技巧を駆使してどんなにイメージを重ねてもたどり着けない、人智を超えた手の届かない美』の世界だからではないか。
3Dで見られなかったのであくまでも想像するのみだけれど、このアバターの豊かな世界を体験するために3Dは大変役立っただったのだろう。体感し共に空を飛びナヴィの思いに寄り添うための手段。3Dはやはり手段であって目的ではない。もちろん3D抜きで見ても十分感動するが、3Dだったらより感激したのだろうなあとちょっと悔しく思う。
あれこれ駄弁を連ねているが、とにかくスペクタクルで、血沸き肉踊り、泣いて笑って、心底楽しめる映画なのである。これを見ないのは損だ。言っては何だが元嫁の例の映画、あれは佳作の域を出ておらず肩すかし映画であった。アバターは数段上を行く、エポックメイキングな傑作なのでは、と強く思った。3D映画は駄作が多いけれど、見るべきものもあるのだなあ。サプライズとサブライムのある映画はやはり見応えあります。
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