「火の魚」

2010/11/26(Fri) 17:15
その他ドラマ

直木賞作家村田(原田芳雄)は故郷の島に帰り執筆の日々。超偏屈な彼は島の誰とも付き合おうとしない。彼はいわゆる『官能小説作家』、彼の態度と併せて島の人々の評判ははかばかしくない。
ある日東京の編集者が原稿を取りにくる。いつもの担当伊藤ではない折見と名乗る女性(尾野真千子)はややぶしつけというか無作法というか、愛想がなく村田は気に入らない。一度は門前払いを食わすものの、彼女が浜辺に海藻で描いた竜の絵を見て気が変わる。ちょっと面白そうだ、退屈しのぎにこいつと付き合うのもいいかも。
折見は学生時代から影絵の人形劇をやっているという。島の子供たちに見せてやってくれ、そしたらお前を担当と認めてやってもいい。そして折見の島通いが始まる。
彼女の影絵はなかなかのもので、村田も認めざるを得ない。島民たちの評判も上々、子供たちには大人気だ。
そんなこんなで村田と折見のでこぼこな日々は訥々と続いていたが、ある時村田が自分の作品の感想について正直に言えと折見に迫ったことから、波風が立ち始める。そもそも、村田が折見にきつくあたったのも、彼が彼女のことを気に入っていたからで、このまま気に入り過ぎてしまうと自分がどうしたらいいのかわからなくなる、ええいこんなの壊してしまえと思ったからだ。
村田は読者に人気のあった女主人公をあっさり殺して連載終了、さらに彼はその連載の単行本化にあたって「魚拓を表紙にしよう」と言い出す。村田が長い間かわいがっていた金魚を殺して魚拓を取れと折見に命令。折見は涙をこぼしながら魚拓をとった、和紙にくっきりと映った美しいりゅうきんの姿を見て村田は言葉も出ない。
その後折見からは何の連絡も来なくなった。新連載のこともあるしと編集部に電話をかけ伊藤を詰問、折見はどうしたんだ?!口止めされていたのですがと伊藤は渋々言う、折見は2年前のガンが再発して入院しました、と。

村田が島へ戻ったのは、2年前ガンに罹ったからだった。良性腫瘍だったものの一度は死を覚悟した彼は、もう虚勢を張った生活はごめんだ、と故郷の島で真っ当な生活を始めた。彼はまさか折見も死に瀕したことがあるとは思いもしなかった、若くて小生意気で怖い者知らずの折見。お前にこわいものなんてあるのか?と聞くと「死ぬのは怖いです」と答える。ばかやろう、死の恐怖なんて知らないくせに、とその時村田は怒った。でも本当は折見も、いや折見のほうが村田よりも、日々死を意識していたのだ。
それなのに金魚を殺させ魚拓を無理矢理とらせた。折見はじっと耐え、丁寧に仕事をこなし、実に美しい魚拓をとった。彼女の心のこもった魚拓を前にしても、村田には折見の気持ちがわからなかった。
最後、村田は巨大な薔薇の花束をささげ、折見の見舞いに行く。それが彼にとってどんなにこっぱずかしいことか折見にはよくわかっていた。
島へ戻る船上で村田は叫ぶ、「煙草がすいてぇ~!」好きなだけ吸えばいいのだ。折見だってきっと、くすっと笑って「無理はなさらないほうがいいかと」と言うだろう。

NHKらしい良質のドラマ。最後がからっとしていてよい。尾野真千子の大根すれすれ(に見える)の演技もよい。原田芳雄は偏屈じじいがやたらと似合う。NHKオンデマンド315円のおかげでいいものが見られました。

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