TheWire/ザ・ワイヤーS5#60 30

2010/11/12(Fri) 19:35
The Wire

本当の最後である。次のエピソードもシーズンも無い。
BSGが終わり、TheWireも終わる。私は大きなくさびが打ち込まれたような気分だ。

1847675980The Wire: Truth Be Told
Rafael Alvarez
Canongate Books Ltd 2009-10-01

by G-Tools



ホームレス連続殺人はなかった全てでっちあげだった、とダニエルズ等から報告をうけたトミーは返す言葉がない。返したいのだが言葉が出てこない。頭の中は竜巻か暴風雨か、とにかく何もかもがしっちゃかめっちゃかになっていただろう。ノーマンは呆れや怒りを通り越して笑うしか無い風。同じですよボス、誰もが欲しいものを得るために何かを操作する。警官も我々も。
生真面目で真正直なダニエルズは即刻公表即刻処分しか考えられない。マーロ一派逮捕という成果があろうとなかろうと、それ以前にこんなことを認めてたまるものか。ジミーの行為は、警察システムを根幹から揺るがしかねないもので、同僚たちに対する裏切り行為でもある。絶対に許せない。
しかしトミーたちは違う。こちらの方針が決まるまで沈黙を守るよう、ダニエルズに厳重注意。もし彼が正しい道をと動いてしまうと、トミーの知事への道は絶たれ、ロンダのキャリアも終わり、マーロ逮捕もその正当性が問われてしまう。正義はなされるべきだけれど、その代償も大きいのである。
隠蔽したままなんとかうまくソフトランディングさせる-裏で、内々で処理すべしとトミー、マイク、ボンドは同意。ロールズは最初は反対するが、「トミーが知事に当選したら絶対悪いようにはしない」将来のポストの約束と引き換えに、首を縦に振る。
(ロールズのダマスクス的瞬間て何よ?と調べたらダマスカスはパウロがパリサイ派からキリスト教に回心した超有名な地なのですね、無知だ私。こういう言い方がさらっと出来るシニカルなノーマンは、やはり優秀な書き手だったのでしょう。)
「全て知られたよ」とジミーに話すレスター。二人は、なぜどうやってばれたのか、即クビにならないのはなぜか困惑する。カルケティがからんでいるからだろう、とレスターは推測。

デューキィは久しぶりに学校を訪問し、プレズに借金を頼む。家を借りて学校へ戻りたい。GEDプログラムに登録したい。200ドル、できれば更にもう50あれば。デューキィはすらすらと話すが、プレズは彼の話は嘘だと分かっていたと思う。『君が約束を守ってくれたらこれからも僕たちは友達でいられる、君はまた僕を頼ることもできる。でもそうじゃなければ、僕たちが会うことは二度とないだろう。』とプレズは言ったが、『君が嘘をついていることは分かっている、でも君がどうしても金が必要だというのは事実だし、僕も君を助けてあげたいと思う。だから貸してあげよう、ただし僕たちはもうこれきりだ、いいね。』と心中では言っていたのでは。もちろんそうじゃなければ、と淡い期待は抱いていただろうが、車で送っていった先のデューキィを見て、プレズは「嗚呼」という顔をして去る。さようなら先生、いろいろありがとう。

サン紙編集部。ピュリッツァー賞の季節が近づいている。
ガスはフレッチャーの文章を褒める。beautifulだ、バブルス自身と彼の世界が身近に感じられる文章だ、日曜の一面に載せよう。このシーンの二人のやりとりがとても好き。ガスの「beautiful」の言い方、それに反応するフレッチャーの表情、すごく良い。(ガスが言及するジョゼフ・ミッチェル、常磐新平訳で何冊か邦訳が出ているが未読。wikiにある『 He is known for his carefully written portraits of eccentrics and people on the fringes of society』という記述にはなるほど。)
フレッチャーはバブルスに載せていいかどうか尋ねたのだがまだ明確な返事を貰っていないと言う。ガスは記事にすることを話したのか?と驚くが、フレッチャーはクリーンにやりたいからと答える。徹頭徹尾誠実で、きちんとしたフレッチャー、誰かさんとは大違いだ。
その誰かさんについて、ガスの旧友ロバートが下した判定は『ほつれだらけのセーター』。ほつれた糸がわんさか出ていて、引っ張るとどんどん解けてきりがない。記事内の引用コメントについて本人に確認してみたら「あんないいこと本当に言ってみたいよ」と言う者がいたほどである。
だめ押しに次ぐだめ押しに、ガスは出方を決めかねている。
そしてスコットはまたまた嘘。酔って寝転がっていただけのホームレスを拉致未遂被害者に仕立てようとする。現場に呼ばれたジミーにスコットは、グレーのバンがどうのこうのとまことしやかに証言。しかし今回は目撃者がいてスコットの嘘は即座にばれる。そもそも最初から、ジミーはスコットの言うことを信用していない顔だった。
ところがサンの上司クレバナウは『スコットの事件』を掲載すると言う。ガスはスコットの記事の信憑性について上司と衝突するが、彼に対する妬みからくる中傷だと、まともに受け取ってもらえない。
その後スコットはジミーからとうとう真相を告げられ、放心状態で社に戻る。

嘘をつき続けているとそのうち本当になる?ならないはずだが、今回は模倣犯が出てしまった。手首に白いテープを巻き付けられたホームレスの死体が発見され、ジミーの事件(彼のケースは赤いテープだ)の続きとされる。「俺がやったんじゃない」とジミー。それだけは確かだ。
首の皮一枚繋がっただけの宙ぶらりん状態のジミーは「これがお前の最後の捜査だ即時解決しろ」とロールズ&ダニエルズに引導を渡される。
臭う証拠群の中から名刺を見つけたジミーはぴんときて、あっさり事件解決、所要時間5分か?犯人は同じホームレス仲間で、今回を含めて2件の犯人であることが判明する。しかし彼は重い精神障害を患っていて、ジミーの連続殺人全ての犯人だと言わせようと思えばできる。

レヴィはマーロと話すうちに、警察の捜査に疑問を持ち始める。この件には何か嘘がある、違法盗聴の可能性有りかも、調査員(ハーク)も盗聴について言っていたではないか。
そしてレヴィはロンダの元へ。違法盗聴なんだろ?それを元に公判に持ち込むつもりなら、手荒な対抗策を取らせてもらうけど、いいのか?探られたくないことがあるんだろ?レヴィが確固たる証拠をつかんでいるわけではないが、事実は彼の言う通りなのでロンダは頭が痛い。
マイクとボンドとロンダで相談。結論は『レヴィと取引する』。悔しいがそうするしかないのだ。ただしこちらに有利な取引ができる材料がある、それはレヴィが検事局の人間を買収していたという事実、録音証拠も揃っている。(レスターの最後の善行だ。)
録音テープを聞かされるレヴィの顔が傑作。困惑と怒りで、顔色がどす黒くなっていくような感じがする。「金額はいつもと同じでいいな」あまりにも露骨なテープで、ロンダもここまでの脅しはしたくなかっただろう。
然して公判は無し。クリスの仮釈放無しの終身刑はどうしようもない、何せDNAという動かしがたい証拠があるので。(バンクの地道な捜査のおかげである。)マーロは釈放、ただしストリート商売からは引退することが条件だ。「王座を手放すのかよ」とマーロはやや不満げだが、俺がまとめた取引なんだぜとレヴィは得意満面。
「君のおかげだよ」とハークに大感謝のレヴィは、マーロの携帯番号を警察に流したのもハークであるとは思いもしない。いつか気付かれるのではないかと、私はずっとハラハラしていたのだが。

ジミーの最後の犯人逮捕がうまく利用されて、連続殺人事件もなんとなく解決できたようなうやむやな、でも市長にとってはハッピーな展開になる。そしてダニエルズは次期警察長として任命される。

ジミーに「お前も俺も嘘つきだ」と言われた後のスコットが「調子が悪いので早退します」と席をたつのだが、その後に続くボルチモアの様々な風景の繋がりの映像、これがたまらなく好きだ。何気なくつないでいるけれど、まるでワイズマンのドキュメンタリーのようで、見惚れてしまう。町の呼吸が感じられて、本当に素晴らしい。

人々の進退が加速化する。
犯罪統計の数字の操作をよろしく、とマイクに頼まれたダニエルズは断固拒否し、困ったマイクが相談したネリース議長は以前バレルからもらっていたダニエルズの過去ファイルを使うのは今だと判断。元妻マーラが送り込まれ、ダニエルズは辞める道を選ぶ。
クビにはならないけれど捜査の仕事はできないわ、とロンダがジミー&レスターに通告。
マーロは幹部たちを集めて、元締役の権利譲渡の相談。ビジネスマンになるのさとマーロは言うが、皆は半信半疑である。
ジミーの葬儀的送別式がいつもの警官バーでいつものやり方で行われる。ジェイは言う、「俺が通りで殺されたら、捜査はお前にやって欲しいと思っただろうよ。お前は俺が会った中で一番の刑事だ。」暇があるとポルノ雑誌を眺めて、いつも皮肉ばかりのジェイだったけれど、彼はジミーの能力をちゃんと分かっていたのだ。
宴は続いている。外で一息入れていたジミーとレスターに、「報告したのは私よ」とキーマが告げる。二人はびっくりするが、すぐ納得もする。それがキーマがキーマたる所以だから。
バークスデール、ジョーと旧世代に仕えてきたスリムチャールズはジョーのためだ、とチーズを撃ち殺す。
酒宴を途中で切り上げたジミーはビーディと肩を並べて玄関先に座っている。彼の本当の気持ちはわからないけれど、不機嫌な顔はしていない。
バブルスの記事が掲載された。気恥ずかしそうに読み、丁寧にたたんでポケットに入れるバブルス。
アルマは支局へ左遷。スコットの空っぽの取材ノートと彼の嘘を上司に突きつけた罰か。
彼らは嘘でもいいから賞が欲しいのさ、それが取れればこの小さな池から外に出るきっかけになるかもと思ってるだけさとガス。
ふと思ったのだが、スコットの嘘は嘘ではないのだろう。あれが彼の生き方、呼吸法みたいなもので、無意識にああなるのだ。相手の気持ちを少しは傷つけたとしても生き死にを左右するほどの嘘でなければ、多少物事が混乱しても面白ければ、結果オーライであれば、許される。それに事実新聞は面白い方が売れるじゃないか。
(そして現実の新聞ジャーナリズムは死に体に瀕している。)
新コンビ、バンク&キーマ。昔のジミーよろしく判事に直談判するシドナーは、ラフな服装からスーツ姿に進化した。
なめらかで光沢のある高級スーツを着たマーロは有力者のパーティに出るが、どうも落ち着かず中座。通りのチンピラに喧嘩を仕掛け、生きている実感を得る。やっぱり俺の場所はここだ、と言わんばかりだ。
マイケルはオマーのように無所属のギャングとしてしたたかに生きている。彼の人生に幸あれと祈るしかない。

自分が失踪偽装したホームレスをボルチモアに連れ帰る道中、車を路肩に止め、ジミーはハイウェイから見える町を見つめる、あるいはその未来をか。
幸せそうなレスターの引退生活、楽しげに飲む現役刑事たち、授賞式のスコット、ヴォンダスと交渉中のスリムチャールズ、知事選に勝ったトミー、活き活きと働くフレッチャー、新警察長バルチェック(無能だが市上層部にとってはすこぶる都合いい)、ヤクをうつデューキィ(ああやっぱり)、ロンダ判事とダニエルズ弁護士、終身刑同士語らうクリスとベイ、州警察長に就任したロールズ、妹といっしょに食卓を囲むバブルス、ケナード逮捕(オマー殺害容疑か)。通りも、港も、人々も何も変わらないボルチモア。
さあうちに帰ろう、とジミーは車を出す。

さようならTheWire、充実したとびきりの時間をありがとう。

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2010/11/13 11:16 [ 編集]
カクテキ MAILURL

終わっちゃいました…
マクノルティの捏造のほうはなんとなく想像できましたが、新聞社はしっかり蓋しましたねえ。
正しい事だけでまわっているわけではない現実世界を改めて感じます。
それぞれ役者が退いても、新しい人間がそこに座るだけ、そうやって世の中は続いていくのです。
ああ、濃かった(笑)。

2010/11/13 22:23 [ 編集]
atsumi MAILURL

私はよくA日紙を『嘘つき』呼ばわりして&とるのも止めてしまいましたが、つまるところ新聞ジャーナリズムを信用してないのですな。ガスやフレッチャーのような誠実な記者はいるのでしょうけど…。じゃあ何が嘘つきじゃないのか、わかりません。真実かどうかは当事者しかわからないし、当事者も『真実と思いたいこと』を信じるのだろうし。
今、ヴァランダー2第1話を見終えたところなので、何やらTheWireとは関係ないコメントになっているような(苦笑)
濃かったですねホントに。こんな傑作に出会えて幸せです。

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