TheWire/ザ・ワイヤーS5#59 Late Editions

2010/11/03(Wed) 11:33
The Wire

TheWireにしては珍しい展開のエピソードである。大捕り物的なシーンは敢えて避けられてきたはずだし、嘘くさい勧善懲悪も排除してきたTheWireが、マーロ逮捕に向けての『息も吐かせぬ』スリリングな展開を提示する。一見すると痛快だが、その後すぐに「ここにはふさわしくないのでは」と落ち着かない気分、居心地の悪さを感じてしまう。
ガスによるスコットの嘘の追跡も、ややそういうきらいがある。もちろん嘘は暴かれるべきだけれど、凡百のドラマのような展開とは別の形であってほしい。
英国の映画雑誌『Sight&Sound』の記事には、「第5シーズンはそれまでTheWireが目指してきたものから若干離れ、避けてきたもの(「TheWireのクリエイターたちが長い間『凡庸』としてきたもの-スタスキー&ハッチ的プロットラインのようなあり得ないほら話」)を採用してしまっている。通常なら12-13話あるところが10話に縮められ出来事が圧縮され過ぎている。いつもの『何も解決されないやりきれなさ・暗いたたずまい(それが長所だと私は思うのだが)』の対極的な世界へ集約させられてしまっている」とある。(誤って解釈してる可能性大なので、興味のある方は同誌08年5月号を参照してください。)
そうはいっても、他のドラマとは段違いに素晴らしいのだが。
Late Editionsというエピソードタイトルも好きだ。
『マーロから送信される時計の画像は、長針短針秒針の組み合わせによって特定の場所を指示している』とシドナーが解明した後。
今まで指したことのない時刻の画像がマーロから各人に次々と送られる。尋常ならぬものを感じたレスターは、今こそ動くべきと捜査官を集め、ダニエルズに報告し、逮捕礼状捜索令状を取る。隠れてマーロの盗聴をしていたことに怒りを覚えはすれども、大量の売人逮捕と大量の麻薬の押収、さらには廃屋死体遺棄事件にもつながるであろうクリスの逮捕ができるとあっては、呆れつつも令状を出さざるをえない。ったくこいつには苦労させられるとため息をつきつつ、少し笑顔のダニエルズ。
然して大当たり。マーロ、クリス、モンク、チーズ等等、まさに一網打尽、これぞ市長の望む華々しい成果である。トミーは意気揚々と記者会見。
クリスを押さえ、葉巻をくわえるバンクの悠然とした態度がいい。部下たちと一列に並ばされたマーロの、不可解そうで、ほんの少し悔しさがよぎる表情もいい。
誰かが漏らさない限り、分かるはずがないとマーロたちは考える。密告したのは誰か?スヌープかマイケルか。クリスは絶対にマイケルではないと主張するが、マイケルの独立独歩な態度を快く思わない仲間の前では旗色が悪い。

ジミーも旗色が悪い。レスターの捜査への出資は彼によるものなのだがそれは言えないし、ホームレス事件は勿論進展無し。「大金使って成果なしだよなあ」とランズマンに皮肉られ、キーマの目は厳しい。

スコットのねつ造を調べ始めるガス。ロンドン支局閉鎖によって戻ってきた同僚に、「新鮮な目で見てくれ」と記事の確認を依頼。一方スコットは、ピュリッツァー賞の最有力候補だと上司たちにちやほやされていい気分のよう。彼の中では、自分が嘘をついたという事実はきれいさっぱり蒸発してしまうらしい。
市長会見でダニエルズから「嘘を書かれた、調べてみろ」と言われたグティエレスの報告を受けて、ガスは議長のネリースと話す。ダニエルズはバレルのことを批判してないし警察長になりたいとも思ってなかったのよ、とネリース。やっぱりあのコメントは嘘だった、スコットの創作だった。
更にガスは動く。負傷兵のリハビリ施設で、スコットが記事に取り上げた元海兵隊員テリーの仲間に事実確認。「あの日銃撃戦は無かった、確かに俺は腕を失ったけれど記事にあるような銃撃戦はなかったよ。」
「現場にいたら嘘はつけない」という彼の言葉が重たく響く。スコットは現場が苦手だったっけ。

レスターは連邦裁へ訴えない代わりに(ボンドが欲のためにデイビスを連邦に渡さなかったことで連邦はヘソを曲げているから、デイビスの件が取り上げられる可能性は無い-薄いのだが)、デイビスから弁護士のレヴィが鍵であること、更にレヴィは裁判所にコネがあり情報を買っている、という情報を得る。レスターの勝利はまた一歩近づいたのかもしれない。

キーマはジミーの偽装をダニエルズに報告する。それを受けて彼とロンダは証拠保管庫へ行く。キーマの話は本当だった。最初は半信半疑だった-ジミーはそんなことはしないと信じていたロンダも、信じざるをえない。

明るい兆しが無いわけではない。ディベート大会の壇上で堂々と語るネイモンド。彼の素晴らしい成長ぶりにコルヴィンと妻は本当に誇らしげだ。
フレッチャー記者はバブルスの取材を続けていた。彼の信頼を受けている感じが伝わってくる、誠意をもって取材しているのだろう。フレッチャーはバブルスの付き添いとして、断薬記念の会にも出席。バブルスは本名を名乗り、シェロッドのことも話す。やっと口にすることができた、まだ涙は出るし全ては語れないが、バブルスは闇から抜け出しつつある。

闇を抜けられないマイケルは身に迫る危機を察し、先手をとってスヌープを殺害。殺される前にスヌープは「お前は今までもこれからも仲間じゃない」と言う、マイケルにもそのことはよくわかっていた。マーロやクリスは彼のことを理解してくれたが、ファミリーにはなれない。ストリートも彼のホームにはならなかった、もしかしてここなら?と思ったのかもしれないが。
バグを親戚に預け、デューキィはスラムへ。魔窟のような雰囲気に一瞬足がすくむが、そこに行くしか無い。
別れる間際にデューキィは夏の日のいたずらの思い出を語る。楽しかったよな覚えてるだろ?、「覚えてないよ」とマイケルは答えるが、思い出すのがつらいだけだ。彼はずいぶん遠くまで来てしまった、そしてこの先もっと遠くまで行かねばならない。

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2010/11/08 09:38 [ 編集]
カクテキ MAILURL

ネイモンド、立派にいい子になりましたね。
血縁よりも大切なことを感じた気がします。
でも、ランディ、ドゥーキー、マイケルと弟のことを思うと、あの夏にみんなを戻してあげたいです。
マイケルの「覚えてない」と、バグの涙は切なすぎました。
確かにワイヤーにしては珍しい悪人逮捕の急展開でしたね。
でも絶対このまままとまるわけはないので、やりきれなさへの期待を持っていようと思います(笑)。

2010/11/08 10:15 [ 編集]
atsumi MAILURL

ネイの成長ぶり、本当に素晴らしい。彼の素質を見抜いたコルヴィンも偉い。信じてはいたけどここまで伸びてくれるとはと彼も本当に嬉しいと思います。子供はしかるべき時にその子に合った形で芽を伸ばしてあげれば花開くのですよね…。教育は本当に大切です。
マイケル同様ドゥーキーの転落も哀しい。
ガスさん、いいですね~リハビリ施設の彼の隣で何気なく座っている姿も自然です。彼はスコットという人間がよくわかっているから、非難を目的として動いているわけではないのですよねきっと。でも次次と嘘が確定していくから彼自身も困惑してしまう。
いよいよラストです!ハンカチのご用意を!(嘘)

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