パリ、ジュテーム

2007/03/25(Sun) 19:03
movies

パリの名所巡りと共に語るパリへの想い、などと言ってしまうとクサいが、実際そういう映画だからしょうがない。パリ好きにはたまらないのだろうけど、映画全体としてはそれほどの何かは感じられない。というのは見る前から分かっていたことで、でもなぜ見に行ったかというと、ジーナ・ローランズとベン・ギャザラが出るエピソードがあったから。ジョン・カサベテスの回顧上映があったのは、もう10年以上前だ。「オープニング・ナイト」を見たのはその更に2年前か。目の前でファンが交通事故死したことをきっかけに壊れてゆく女優マートルが、泥酔状態でありながらブロードウェイ公演の初日を演じ切ったあのラストの感動は忘れられない。その「オープニング・ナイト」のもう一人の主役、演出家のビクター役だったベン・ギャザラは、いつも粋な男だった(一時期私のヒーローだったくらい)。
カルチェラタンのレストランでジーナとベンは待ち合わせ。目的は離婚の話だった。長い間別居生活は続けていたが、離婚はしていない二人、ベンと若い恋人の間に子供が産まれるというので正式に離婚しようということになったのだ。話をしているうちに、なんとなく昔のいいムードが戻ってきそうになるけれど、やっぱりそれは嘘。もう過去には戻れない。明日弁護士同席で正式に話をしようと二人は別れる。ジーナは自宅の窓に映る自分の顔をじっと見つめる、ベンは雑踏を1人歩いていく。
支払いをしようとするベンに対してオーナーのジェラール・ドパルデューは「店のおごりです」と返す。これは話の中でだけでなく、現実にジーナ・ローランズとベン・ギャザラと、今はもういないジョン・カサベテスへの、この映画に携わる皆からの気持ちではなかったか。
エンディングで、ボブ・ホスキンスとベン・ギャザラが「ボブ!」「ベン!」と抱き合うショットにも感激。ペール・ラシェーズ墓地のエピソードで、オスカー・ワイルドの亡霊役のアレクサンダー・ペインもウケた、雰囲気出てたもので。
人によって気に入るところが一つ二つあればいい映画、かな。

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合唱ができるまで

2007/03/24(Sat) 22:54
movies

題名そのままのドキュメンタリー。教会でのミサ・コンサートに向けての練習の様子が丹念に描かれます。子供から大人まで、時にはよそみをしたり、注意力散漫で注意されたりもするけれど、少しずつ進歩していくのが明らかにわかる。ピースの一つずつが磨かれていき一つにまとまっていく、その輝きには胸をつかれる思いがします。
指揮者のクレール・マルシャンは、アマチュアだからといって半端な指導はしません。ラテン語の歌詞の持つ意味をきちんと教え、細かい音程を正確に再現するようフレーズを区切り、繰り返し歌わせる。緻密な指導を繰り返していきます。細部をおろそかにしたら、彼等の歌う聖歌のエッセンスは決して伝わらないからです。神に届かないどころか、聴衆にも届きません。何よりも、歌い手たちが手に出来るはずの歓びが逃げていってしまう。
多少合唱経験がある私にとっては、発声練習のシーンや、声を保つ、声を飛ばす感覚が非常にリアルで、近しい感じがしました(劇場じゃなかったら、いっしょに歌いたかったくらい)。
全体練習が始まっても最初のうちは今ひとつ揃わず、ばたばたした風になってしまう。ところがある瞬間から変化が起こり、音楽が立ち上がり始める。マルシャンも興奮しているし、団員たちも自分たちの音の変化にどきどきしていたことでしょう。まさにケミストリー!そして本番が始まります、きっと大成功だったはずです。
こういう映画を見ると、音楽に携わることがいかに素晴らしいかを痛感し、とても羨ましくなる。既成の音楽を聞くだけでなく、自分で奏でられたらどんなに素敵だろう!

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Law&Order SVU S1#7、8

2007/03/21(Wed) 21:00
FOX系

いやな後味の残るエピソードが二週続きました。
Law&Order SVU #7 Uncivilized
ライアンという少年の死体が発見される。不良風のジミーGとマイクDによると、気味悪い男がライアンが殺された日も公園をうろついていたという。そのタービットという男には、児童への性的虐待で逮捕された過去があった。タービットが第一容疑者として一気に浮上、更には彼の前歴を知った住民たちから、タービット排除・非難の声が激しくあがり、タービットを釈放できない雰囲気が出来上がっていく。しかし決定的な物的証拠は無い、バーテンダーの証言により、アリバイもあることがわかった。タービットは釈放されるが、ライアンの父親によって射殺される。
ステーブラーたちはもう一度最初から事件を見直すことに。1番最初の証言者ジミーとマイクに再度確認を取ると、証言内容が食い違っていることがわかる。現場をくまなく探すと、ライアンの眼鏡も発見され、指紋が取れた。ジミーとマイクそれぞれに、本当のことを話してもらわなくてはならない。彼等は話し始める。

ラストのジミーGとマイクDへの尋問シーンが強烈。マイクはいきがっていた態度が崩れ、決して強くない自己が露呈する。ジミーはあくまでも虚勢を張ったまま。自分たちは児童虐待者を見つけて退治してやったんだ、何が悪い?ライアン?ヤツはretardだから、どっちみちloserじゃないか。ジミーの顔は必死だった、自分はloserじゃない、それを証明するために彼が選んだやり方は、余りにも残酷で明らかに誤りだったが、それを認めてしまったら彼は崩壊してしまう、まるでそんな感じ。ステーブラーとベンソンは絶句するばかりだった。

#8 Stalked
地方検事カレン・フィッツジェラルドが惨殺死体で発見される。石で殴られレイプされ、頭を銃で撃ち抜かれていた。彼女はどんな事件も厭わず引き受け、敵が多かった。怨恨の線で彼女が過去有罪に持ち込んだ人間をあたっていく。
リチャード・ホワイトという現在は不動産業を営む傲岸な男が、過去カレンによって有罪になっていた。一応アリバイはあるが、怪しい。彼の過去を調べるうちに、灰色がどんどん黒になっていく。アリバイは偽物だった、カレンのストーカーだった、不動産業のパートナーのキンバリー・フィリップスもホワイトに脅迫されているようだ。そして彼は今度はベンソンに目を付けた、彼女の経歴を諳んじ、生活の場も把握している。
ホワイトは巧妙で、全く尻尾を出さない。そうこうしているうちに、彼を訴えたルイーズが殺された。明らかにホワイトの仕業なのだが、やはり決定的な証拠がない。
ベンソンに執着するホワイトは、彼女を公園に呼び出した。それを利用して彼を逮捕、ベンソンが尋問にあたる。どこまでも巧みな彼は、最後まで一枚も二枚も上手だった。

常に主導権は自分にあり、全ての人間は自分の支配下にあるというのが基本のホワイトは、まさに悪魔。自分に逆らう人間は徹底的に痛めつけ、尊厳を傷つけ、命を奪って当然。相手をコントロールするために様々な情報を集め、相手の弱点を徹底的に攻め、反撃すら許さない。ベンソンは負けはしなかったが、勝てない。ステーブラーも同様。刑務所に送ることはできるだろうが、悪魔をこの世から消し去ることはできない。
願わくは、ベンソンが悪夢にうなされることがありませんように。

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ラスト・キング・オブ・スコットランド

2007/03/11(Sun) 22:54
movies

ニコラス・ギャラガンは、厳格で丁重な父親と優しい母の揃った家で育ち、ホームドクターの父の跡を継ぐべく医者への道を歩んでいた。しかし単調で窮屈な空気と時間に耐えられず、どこか全く違う場所で人のためになる仕事をしたい、人とは別の事がしたい、とウガンダの診療所の仕事を選ぶ。都会の病院とは違って、設備も薬も全く不足していて、住民たちの信頼も得ているとは言いがたい状況ではあったが、ニコラスは懸命に働く。
ニコラスがウガンダに到着したのはアミン率いる軍部によるクーデター翌日だった。アミンの尋常ではないエネルギーと無類の人なつっこさが、ニコラスを惹き付ける。危なくも妖しい魅力があるものに、若者は惹かれるものだ。だが、この場合はその魅力があまりにも危険な結果を招くことになるが、ニコラスにはまだわからない。
偶然アミンの傷の手当をすることになったニコラスをアミンは気に入り、主治医及び顧問として重用するようになる。最初は戸惑うが、豪勢な生活と、人から敬われる気分や、人の上に立つ快感等から逃れられるほど、彼は世知に長けていない。アミンという名の麻薬にはまるようなものだ。周囲の忠告にも全く耳を貸さずに、今が人生最良の時、とばかりに日々を楽しんでいた。しかし破滅の時は着々と近付いてくる、ニコラスには余り時間が残されていない。アミンの狂気の帝国自体にもひびが入り始めている。

アミンを演じたフォレスト・ウィテカーはこの演技でアカデミー賞主演男優賞を獲得。授賞にふさわしい迫力演技でした。彼の目に宿るのは、狂気と無邪気な幼児性、それがはっきりと見えます。指導者であると同時に皆と同じ地面に立つ人間なんだよ、と国民を安心させ、その裏で政敵や気に入らない人間、民族を惨殺していく。何を考えているのか、何を目指しているのか、誰にもわからないし止められない。ニコラスは自分なら止められると思っていたけれど、それは間違っていた。
ニコラス役のジェイムズ・マカヴォイはもう一人の主役といってもいいくらいの存在でした。若者らしい正義感と野心でウガンダへ来たところまではよかった、あのまま診療所に留まり、現地の住民たちの治療と教育に携わっていたら、ひと粒の麦的ではあっても、誰かの役に立ち、達成感を得て帰国できたでしょう。でもアミンの魅力の罠にはまってしまった。
アミンの前に立つと、まず警戒心が先にたつ。動物の勘のようなものが働いて、この人に近付いてはいけない、とアラームが鳴る。診療所のサラ(ジリアン・アンダーソン、スカリーはすっかり映画女優だ)はそのアラームに従っていたけれど、彼女より若くまだ純粋だったニコラスには、聞こえなかった。マカヴォイの蒼い瞳には様々な色が見えます、戸惑い、羨望、もっと覗いてみたいという心、特権を満喫している満足感、でも最後には何も見えないくらい濁ってしまった。生きて帰れるのかどうかもわからない、最後に浮かぶのは、恐怖と失望の色か。

途中ニコラスに忠告をして無視される英国の高等弁務官としてサイモン・マクバーニーが出ていました。彼の主宰する『テアトル・ド・コンプリシテ』はもう来日しないのかな、「ストリート・オブ・クロコダイル」は信じられないような舞台だった…とはいっても、映画の中の彼は普通のおじさんですが。
監督はケヴィン・マクドナルド、「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」「運命を分けたザイル」等のドキュメンタリーが印象に残るスコットランド人。脚本はヘレン・ミレンの「クィーン」も書いてるピーター・モーガン(オスカーの時キュートな感じでした)。
最後まで息をつかせない125分、お薦めします。

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「善き人のためのソナタ」についてあれこれ。

2007/03/10(Sat) 22:53
movies

1984年、東ドイツ。国家保安省(シュタージ)を中心に、国民全体が相互監視体制のもとに暮らしていた。いつ誰が誰を密告するかわからない、どんな有名人でも盗聴されている可能性があった。主人公は有能なシュタージであるヴィースラー、情を挟まず冷静に仕事を進め、今まで大勢の反体制危険人物を挙げてきた。彼の手にかかれば、どんな不屈の闘士でも、おちてしまう。そのヴィースラーの次なる標的は、劇作家のドライマン。彼の芝居を劇場に観に行ったヴィースラーは、彼の反体制的な匂いをかぎつけ、目を輝かせる。
家中に張り巡らされた盗聴網、ドライマンも恋人クリスタも全く気付くことなく、盗聴作戦が始まった。ヴィースラーはいつも通りに淡々と仕事をこなしていく筈だった、しかし今回の仕事はいつもとは違う。階下から聞こえてくる耳にしたことのない言葉、心を揺さぶるピアノソナタの美しい旋律がヴィースラーの心を捉える。ドライマンたちがいない時に入った部屋には、うずたかく積まれた本本本。ヴィースラーは、ブレヒトの本を選び、自宅のソファーで言葉一つ一つを丁寧に読む。彼にとって新しい世界がどんどん開けてくる。
精神的に幸せであっても、仕事としてはまずい状態。彼は偽の報告書を提出し続けた。『特筆すべきことは何もなし』本当は、政治的な討議、東ドイツの体制批判が繰り広げられていたのに、彼は何も報告しなかった。
そして。ドライマンが匿名で書いた東ドイツにおける自殺問題の記事が西独の週刊誌『デア・シュピーゲル』に掲載される。国家保安省が本格的に動き始め、いよいよドライマンの身が危なくなるが、ヴィースラーはシュタージであることを忘れたかのように、ドライマンたちを守ろうと必死に動いた。
2年後、ベルリンの壁崩壊。ヴィースラーは左遷先の地下郵便仕分け室でそのニュースを聞く。自由な時代が始まろうとしていた。

危険人物を嗅ぎ分け落とすことのみをインプットされたロボットのような男だったヴィースラーが、ドライマンの盗聴を続けるうちに変化していく様が情感を込めて描かれます。劇場でドライマンを見た時のヴィースラーの目の輝きは不気味で、感情が無いように見えましたが、階下から上がってくる様々な言葉や音を糧にして、彼は日々成長していったのです。映画の邦題『善き人のためのソナタ』は、ドライマンの恩師的な存在の演出家イエルスキが、誕生日プレゼントとしてドライマンに贈ったソナタの楽譜から取られています。イエルスキが自殺したという電話を受けたドライマンが、イエルスキを悼みながら弾く実に美しいその音楽は、ヴィースラーにとって衝撃的なものでした。自分たちの仕事によって仕事を奪われた人間が、失意のまま自らの命を絶った。その人物から贈られた音楽はあまりにも優しく、「これを聴いた人間は悪人にはなれない」とドライマンが言った通りになります。
壁崩壊の2年後、ドライマンは自分たちが完全監視下にあったことを知り、記録の束から自分たちを守ってくれた男の存在を知る。そして彼らしい形で、感謝の気持ちを返す、この最後がさりげなくてとても良かった(ハリウッドなら大げさに抱き合ったりするのでしょう)。映画全体が冬のイメージなのですが、最後に春のきざしが見えてくる、そんな終わり方。良い映画でした。

つづき:
ドライマンたちの監視を命令した厚生大臣(太った下品野郎)本人から事実をドライマンは知らされるのですが、服装から想像するに、その元大臣はそれほど落ちぶれた風には見えませんでした。ずるく立ち回って、責任追及の手を逃れたのでしょう。
一方、ヴィースラーは社会の片隅に追いやられ、郵便配達の仕事をしながらひっそりと暮らしている。ドライマンは監視記録からヴィースラーを知り、彼のもとを訪れ、声をかけるつもりだった。しかしタクシーを降りて、ヴィースラーの方へ歩き出そうとした瞬間、やはりやめようと車に戻る。ドライマンの心の中を、どんな思いが駆け巡ったのか、正確に想像するのは難しいです。でも彼はヴィースラーの姿を見て、彼の誠意に報いるには、会って感謝の言葉を口で述べるのではなく、もっとふさわしい別の形があるのだということを瞬時に悟ったのではないでしょうか?2年後、書店(カール・マルクス書店)のショーウィンドウにドライマンの新刊が並んでいるのをヴィースラーは見つけ、店に入り手に取ってみる。冒頭に自分に捧げられた献辞があるのを見つけ、どんなに心躍ったことでしょう。もしかしたら時が止まったままだったかもしれないヴィースラーの人生が、再び時を刻み始めたのかもしれない。
偽の報告書上の文章は、当局にとっては意味の無いものでしたが、ドライマンにとっては命綱だったわけです。そしてドライマンはその書き記された言葉に対して、感謝の気持ちを込めて最上の言葉を贈った。ヴィースラーはしっかり受け止めた。さりげない終幕ですが、余韻がいつまでも残る素晴らしいものであったと思います。
恋人クリスタは密告してしまった後悔と絶望の中死んでしまった、ドライマンは生き延びたけれど、言葉を生み出す気力を無くしていた。その時自分を救った言葉があったことを知り、再びペンを取る勇気を持てた。
考えれば考えるほど、良い結末だったと思います。

そのまたつづき:
逮捕されたクリスタをヴィースラーが尋問するシーン。疲労に加えて、薬が切れて集中力散漫になっているクリスタに、ヴィースラーは「女優はファンを大事にしなくては」と『ファン』という言葉を繰り返します。以前にクリスタは家の近くの安酒場でヴィースラーと会っていて、その時彼は「私はあなたのファンです、本当のあなたを知っています」と話していた。その時のことを、クリスタに思い出してもらって、「大丈夫、本当のことを言っても私があなた方を守るから」とヴィースラーはクリスタを安心させたかった。彼女の顔に瞳をまっすぐ向けて、私はあなたのファンなんだよ、と。クリスタの目はうつろに泳いでいたけれど、きっと伝わったと思う。ヴィースラーの心残りがあるとすれば、クリスタを最後まで守りきれなかったことでしょう。

ヴィースラーがブレヒトを読むシーンもとても印象的だった。言葉を一つずつかみしめるように、丁寧に読み、心の中に貯えていく、その幸せそうな表情。

保管されている自分の監視記録を閲覧するのは、ものすごく辛い作業なのだと思う。自分が職場から追い出された理由は実は隣の誰それさんの密告が原因だった、というようなことがわかってしまうのだもの。まさに負の記録、でもそれを公開して閲覧可能にしているところが、潔い、残酷だけど。
と、つらつらと浮かぶことをとりあえず残しておきます、まとまりが全くないけど。

さらに:
英国の映画雑誌『sight&sound』の5月号巻頭記事は、「善き人のためのソナタ」についてのもので、とても考えさせられる内容でした。
敏腕シュタージのヴィースラーがドライマンたちの盗聴を続けるうちに、人生の別の意味を見いだし変化を遂げ、ドライマンたちを助けるというストーリーだけれど、現実のシュタージにそれは絶対にあり得ない。ヴィースラーのような人間は存在しなかったし、そうなりたいと思う者もいなかった。システム的にあり得ない。
映画の中でヴィースラーは、冷戦終結後ジャンク・メールの配達のような仕事をしていたが、現実のシュタージは高学歴を利用してもっといい仕事に就いた例がほとんど。シュタージに人生を破壊された人々が苦しむ一方、シュタージたちは易々と生き延びた。
ドライマンによる自分への献辞をヴィースラーが見つけるラストは、見るに耐えない。シュタージに感謝するなんて!この映画は、歴史は無視せよという現代のニーズに対して映画がどのように応えるかをよく表している。
映画が歴史の真実といかに乖離しているか、を延々述べていて、作る側の責任と観る側の態度に疑問を突きつけています。
筆者はこの映画を非常にほめています。プロットが練り上げられていて、ディテールの描き方もうまい。感情豊かで、非常に美しい映画だ、キャストも最高に素晴らしい。デザインも音楽も比肩しうるものがないほど良い。近年自分が見た映画の中でベストだ、と言い切っている、それでも敢えて現実について語る。
感動的な映画であることは変わらないと思います。歴史と違うから、この映画は偽物だと言うこともできない。でもこの映画を見て傷ついた人、見ることを拒絶している人の数が決して少なくないということは知っておくべき、でしょう。
高校時代に「キリング・フィールド」を見て感動したと言ったら、当時の英語教師に「現実を知らないからなぁ」とあざ笑うかのように言われたことを思い出しました。あの時は結構傷ついたけど、その後先生の言う通りの例が多々あり、己の無知ぶりを痛感することしきり。映画ってパワーがあるから、つい信じてしまいそうになる。『人はより善き存在になれる、というモチーフには抗いがたい魅力がある』そうなんだよねぇ…。

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ルワンダの涙

2007/03/09(Fri) 22:47
movies

キガリにある公立技術専門学校。クリストファー神父(ジョン・ハート)が運営するこの学校には大勢の子供たちが学びにやってきていた。ジョー(ヒュー・ダンシー)は海外協力隊の一員として英語や地理等を教えている。学校の敷地内にはベルギーのPKO部隊が駐留していて、比較的平和な毎日が続いていた。4月6日、大統領が暗殺されるまでは。
「自分には何かが出来る筈、この状況を変えることは可能な筈だ」とジョーは努力するけれど、現実はそんな生易しいものではなく、止めることは不可能、自分の命すら危ういという現実にぶつかる。何かができるはずだと思った根源には、白人である自分には力がある、相手が多数でも白人の自分にならきっと説得できるという思い込みがあったと思う。BBC特派員の女性は言う「ボスニアで取材した時は、もしあの死んだ女性が私のおばだったら、と怖かったけれど、ここでは何も感じない。ただのアフリカ人の死、と思うだけ。結局人間は自分勝手なのよ」ジョーは彼女ほど正直になれないが、自分の無力さを知った後では否定できなかっただろう。
クリストファー神父はミサを行うために、修道院までなんとか辿り着く。しかしそこには、レイプされ惨殺された修道女たちの死体が放置されていた。あまりのむごたらしい姿に吐きそうになるが、懸命に衣服をかけてやる。学校に帰った神父はこの地における『キリスト教』とはいったい何なのだ、と苦悩する。自分が30年間教え広めてきたつもりだったものは、キリスト教とは似て非なるものではなかったのか。彼等はそうしろと言われたことをするだけではないか。
暖をとるために燃やすものが無くなってしまった、とツチ族の少女が神父に相談に来ると、彼は「聖書がある」と大切にしてきた聖書を集める、聖書を燃やせばいい。
ベルギーのPKO部隊が学校を去ることになった、つまり守るものがいなくなり、外で舌なめずりして待つ民兵たちが乱入してくる、避難民たちの殺戮が始まるということ。神父は子供たちに聖体拝領を施す、天国に行けるように、と。その儀式は誰のためなのだろう、本当に子供たちのためのものなのか、神父自身のためなのか、後者だとしても責めるものは誰もいない。
ツチ族の少女マリーは、「神様は外の人(民兵)のことも愛しているの?」と神父に尋ねる。ナタでツチ族の人間をなぶり殺しにする人間でも、神は赦し愛しているのか。
冒頭、まだ平和だった時、ジョーが授業で聖餐式について質問を受け、返答に困るシーンがあった。神父は「神は全てのものに宿る」と助け舟を出した。自分は神と共にいるから死ぬのは怖くない、という言い方を映画やドラマでよく耳にする。でもこのルワンダの学校に避難した人々は怖くてたまらなかったと思う。神はなぜ我々を見殺しにするのか、とも思っただろう。
ジョーはベルギーの部隊と共に学校を離れるが、神父は残る。そして神父は己の命を捧げてマリーの命を救う。数年後再会したジョーとマリーは、生き延びた者としての苦しみを抱えながら、神父のことを考えながら、静かに語らうのだった。

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Law&Order SVU S1#6

2007/03/08(Thu) 20:57
FOX系

女子大生の死体が発見される。レイプされ、殴打されて死んだようだ。彼女は優秀で美人、大学バスケの『ホステス委員会』に属していた。ホステス委員会とは、なんぞや?バスケで勉強が遅れてる選手の手助けをしたり、洗濯をしてあげたり、その他いろいろ優しくしてあげるお世話係らしい。とくれば、大体想像はつきますが…。
殺された彼女の名前はジーン・ギャラガー、まだ2年生だった。大学は協力的ではない。バスケ部の有力選手がレイプ殺人に関係しているかもしれない、とくればさもありなん。名声に傷がつく、バスケ関係の収入に響く。
が、これは殺人事件。SVUのメンバーが綿密な捜査を続ける中浮上してきたのは、バスケは上手いが素行不良成績不良のライリー、バスケだけでなく学業も優秀な黒人選手チャック。
ジーンは最近酒に溺れていた。その原因は、レイプ。2ヶ月前のバスケ部のバーティ後、彼女は選手の誰かにレイプされていて、心身共にめちゃくちゃな状態にあった。
レイプの犯人がライリーであることは明らかになったが、彼は殺してはいない。チャックのアリバイは母親が強力に証明。そして登場するのは、フランス文学のルソー教授。ジーンに尋常ならぬ執着心を持っていた、ストーカーもしていた。
ルソーは逮捕され、壊れた人形のように話し始める。彼の物語は実におぞましいものだった。ステーブラー、ベンソン、ボス、皆の顔が歪む。

SVUは捜査がほとんどで、その後の裁判の様子が出てくることはあまりありませんが、地方検事たちはちょこちょこ出てきます。今回のアビーは声がハスキーで挑戦的な風貌が良い。彼女ががんがん攻めていく裁判シーンが見たいものです。

カレッジ・スポーツの暗部を描きつつ、真犯人は歪んだファンタジーと共に生き、罰から逃げ延びてきた男だった、というのが皮肉というか哀しい。
そして今週もステーブラーは長女モーリーンの行動にはらはらし、やや横暴な態度もとり、最後はやっぱり仲直り、というパパぶりを披露するのでした。そういえば、最近の米ニュースで、最近では9才で初潮を迎える少女も少なくない、と伝えていました。その分思春期にも早く突入するわけで。S1の8年後の今は、更に悩ましい時代になっているのですね。

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Law&Order SVU S1#5

2007/03/05(Mon) 20:56
FOX系

Law&Order SVU #5
紀行作家リチャード・シラーが死体で発見される。口はテープで塞がれ、真っ赤な下着が突っ込まれていた。仕事は順調、人間関係も円満、人望もある。離婚した元妻とも良好な関係を維持していた。
疑われるのはまず、大家のアナベル・ヘイズ。シラーに対してかなりの執着心を持っていた。シラーに相手にされず、頭にきて殺したのか?
次に娘のバージニア、母親同様シラーに気持ちを寄せている。母親を馬鹿にした風な物の云い、クールで謎めいた態度が目立つ。
アナベルの恋人トム・デイトンも容疑者として浮上、シラーのことばかり話すアナベルに腹が立って、シラーを殺したのか?
トムはトムではなかった、過去に児童性的虐待で捕まったことのあるスコット・デイトンが弟の身分を借りて生きていたのだった。一気にシラー殺しの疑いが高まる。
スコットは「アナベルとバージニアがシラーを取り合い、バージニアが勝ち取った」と話す。少女を喰いものにする輩が許せないステーブラーはスコットが犯人だと、暴走気味。バージニアも、スコットが自分にセックスを強要していたと涙ながらに語る。
が、証拠は別の物語を示す。殺人の直前、シラーとバージニアがセックスしていたことが判明。ベンソンはバージニアが犯人であると確信するが、娘モーリーンの存在があってか、ステーブラーはどうしてもバージニアを被害者に考えたい。そしてバージニアが自殺未遂、アナベルはSVUを訴えるという。決定的な証拠が上がらない中、ステーブラーとベンソンの見解が対立、このままでは先に進めない。
必要なのは真実、バージニアがやっと話し始める「いっしょに旅に出たかった、ここから連れ出してほしかった」

ヘイズ家は、そんなにイヤな場所だったのか。アナベルはアルコールに溺れていて、男漁りに必死だが、娘を殴るわけでもないし、金銭的な苦労もさせていない。
少女が大人になる過程にありがちな現実逃避、父親代わりの誰かが欲しくて幻想を抱き、見つかったと思うと過剰に依存する。本当の『ソウルメイト』なら、旅行から帰るのを待っていられるはず。欲しいものが得られないとわかった時の暴走を、「子供だから」と社会は許してくれない。相手の人生を奪ってしまっただけでなく、自分の人生をも台無しにしてしまったバージニア。誰が何を教えたor教えないからこうなるのだ、というものではないが、親であるステーブラーは娘たちにどう接するのがベストであるのか、これからも悩むのだろう(悩み過ぎ)。

シラーの著作についてSVUの皆が談義するシーン、マンチが「マディソン郡の橋」を駄作だと一刀両断、キャシディは悔しまぎれに「俺が言ったのは映画のほうだ」と反論(苦笑)、マンチが正しいと思うぞ~。

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